短編小説

短編小説 「失われた信用」

短編小説:失われた信用
名古屋の街に、一つの急成長ベンチャーがあった。
社員は200名、業績は右肩上がり、有利子負債もなく、未来は明るかった。取引銀行もその勢いに乗ろうと、積極的に関係を深めていた。
ある日、社長は銀行の支店長に語った。
「ドイツ・デュッセルドルフに支店を出したい。支店探しをお願いできないか。」
支店長は笑顔で答えた。「ぜひお任せください。」
しかし、時は流れても話は進まない。催促を重ねたある日、社長の耳に届いた噂があった。
「成り上がりが生意気だ」と、支店長が行内で口にしているという。
その瞬間、社長の胸に燃えるような怒りが走った。
「信用を踏みにじる者に未来は託せない。」
翌日、決断は下された。
社員200名の給与振込口座を含め、年間100億円の取引をすべて打ち切る。銀行にとっては大打撃だった。

後日、支店長は深い謝罪を携えて社長のもとを訪れた。だが、時すでに遅し。
一度失われた信用は、容易に戻らない。銀行の代わりはいくらでもいる。しかし、会社を率いる社長は一人しかいないのだ。

  • 信用は金よりも重い。
  • 言葉は刃にも橋にもなる。
  • 人を軽んじた一言が、組織の未来を断ち切ることもある。
    この物語は、成功の鍵が「信頼」という見えない資産にあることを教えている。

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