短編小説

短編小説 「継承の迷路」

第一章 創業の火

かつて「ファントム・ゲームズ」は、創業者・神谷誠一の情熱によって立ち上げ

られた。彼はゲームを「文化」と呼び、社員には「遊びを通じて人間を理解せよ

」と語った。神谷のカリスマ性は社内を一枚岩にし、彼の一声でプロジェクトが

動いた。

だが、神谷は70歳を迎え、引退を決意する。後継者には息子の神谷翔太が指名さ

れた。翔太は米国のMBAを持ち、理論には強かったが、現場の空気を知らなかっ

た。


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第二章 分離の設計図

一方、同業の「オルビット・エンターテインメント」は、創業者が早期に退き、

経営をプロフェッショナルに委ねていた。社長は取締役会で選ばれ、社外取締役

が経営を監視する体制が整っていた。

オルビットは持株会社制を導入し、各事業部が独立採算で動いていた。創業者の名は

社史に残るのみで、現場では「制度が人を育てる」という哲学が根付いていた

第三章 迷路の中で

翔太が社長に就任したファントム・ゲームズでは、社内の空気が変わった。彼は

数字を重視し、開発現場にROI(投資収益率)を求めた。ベテラン社員は「ゲー

ムは数字じゃない」と反発し、若手は「何を信じればいいのか」と迷った。

株式は神谷家が過半数を保有しており、取締役会も形式的だった。社外取締役の

導入は見送られ、経営判断は翔太の独断に近かった。

やがて、ヒット作が出なくなり、社員の離職が相次いだ。株主からは「創業者の

時代の方が良かった」との声が上がり、翔太は孤立していった。

第四章 制度の光

その頃、オルビットでは新社長が就任していた。彼は元ゲーム開発者で、現場の

声を拾いながら経営判断を下していた。社外取締役は「創造性と統治のバランス

」を助言し、社員は制度の中で自由に動いていたファントム・ゲームズはついに

経営危機に陥り、外部からプロ経営者を招くことになった。翔太は退任し、神谷

家は株式の一部を手放した。

新社長はまず、社外取締役と指名委員会を設置し、経営の透明性を確保した。そ

して、開発現場に「創業者の精神を制度に変える」ことを宣言した。

終章 継承とは何か

創業者の火は、制度という灯台に変わった。人は去り、名は消えても、理念が制

度に宿れば、企業は迷路を抜け出せる。

継承とは、血ではなく、仕組みである。

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