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短編小説 「つながりの宴」

鶴ヶ島の小さな町工場「三光精機」は、今年めずらしく大きな黒字を出した。社長の三浦は決算書を閉じると、静かに言った。

「みんなで、パーティーをしよう」

役員たちは顔を見合わせた。豪華なホテルでの祝賀会を思い浮かべた者もいたが、三浦は首を振った。

「呼ぶのは“偉い人”じゃない。毎日、うちのために汗を流してくれている人たちだ。仕入れ先の現場担当、外注先の職人さん、配送のドライバーさん。そういう人たちを招待したい」

会議室が静まり返った。

三浦は続けた。

「お中元も歳暮も同じだよ。肩書きじゃなくて、実際に動いてくれている人に感謝を届けるべきだ」

その言葉に、経理の佐伯が小さくうなずいた。彼女は毎年、形式的な贈答リストを作るたびに違和感を覚えていたのだ。

それとね」

三浦は少し笑った。

「商売だからって、売り込みに来た人に冷たくしちゃいけない。時間を割いて来てくれたんだ。たとえ今は取引がなくても、その人が将来のお客さんになるかもしれないし、その子どもたちがうちの製品を使う日が来るかもしれない」

“皆がつながっている”

その言葉が、社員たちの胸に静かに染み込んだ。

◆パーティー当日。

会場は町の公民館。飾りつけは地味だが、温かい空気が満ちていた。

仕入れ先の若い担当者が、緊張しながらも笑顔で料理をつまんでいる。

外注先のベテラン職人が、普段は話す機会のない三光精機の若手社員と工具の話で盛り上がっている。

配送ドライバーの山田は、初めて「ありがとう」と直接言われ、照れくさそうに頭をかいた。

三浦は会場の隅でその光景を見つめていた。

豪華さはない。

だが、ここには確かな“つながり”があった。

「社長、いい会ですね」

佐伯が声をかけると、三浦は静かに答えた。

「会社は数字だけじゃ動かない。人と人がつながって、初めて前に進むんだよ」

その言葉に、佐伯は胸が熱くなった。

パーティーが終わる頃、外注先の職人が三浦に近づき、深く頭を下げた。

「社長さん、こんな会に呼んでもらえるなんて思いませんでした。うれしかったです。これからも、うちの技術で力にならせてください」

三浦は笑顔で手を差し出した。

「こちらこそ。これからも一緒に、いい仕事をしよう」

握手を交わした瞬間、三浦は確信した。

この会社は、まだまだ強くなれる。

数字では測れない“つながり”が、未来を支えてくれるのだと。

そして夜風の中、三浦は小さくつぶやいた。

「皆がつながっている。だから、うちは大丈夫だ」

物語は静かに幕を閉じたが、そのつながりはこれからも続いていく。

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